6月19日(金)発刊のNY日系ローカル紙ジャピオンの某コーナーに載る予定。読者プレゼントのあるコーナーで、私のネットショップで売れ筋のスタイを出します。
今回は私のささやかなブランド「yoriko New York」に関する取材だったのですが、色々と質問をされるので、自分や仕事の諸々を考えるよい機会になりました。
心に残ったのは、この記事を担当しているKさんに布へのプリント方法を聞かれ話すことになった、ステンシルのこと。ホビー系の実用書なども出ているので私は結構知られている手法だと思っていましたが、刺繍や編み物のようにあまり一般的ではないよう。
ステンシルは割と原始的な技法でシンプルな事をやる分には道具も少なく、家庭でもトライしやすい印刷方法です。印刷するものもあまり選ばないのも魅力。
アンディ・ウォーホルが好んで使ったことで有名なシルクスクリーンですが、この源流がステンシルで中国あたりで発祥したというのは、シルクスクリーンの講師でもあった主人に昔聞きました。
調べたら、日本では捺染(なせん)印刷とも言われ、着物の生地などを染めるために古くから使われているようです。江戸小紋や沖縄の紅型など、身近な染物も基本はステンシル。もちろん、もっと複雑化した工程ですが。
まずここで感動。というのも、私は結婚式に紅型の振袖を着たのです!10年後に自分がステンシルで作品を作っているなんて、思いもしなかった。
美大時代はscreen printing(日本で言うシルクスクリーンのこと・現在はシルクはほとんど使われず化繊のスクリーンが一般的になったので、英語ではこの名称をよく使う)を リトグラフと併用するような版画作品を制作をしていたのですが、卒業を機に、多くの薬品やプレスなどの機械、換気できるスペースが必要な版画とは、とんと疎遠になっていました。
でも、成り行きでまたプリントして作品を制作していることに、自分と版画との縁を感ぜずにはいられません。
どんなに原始的でシンプルな手法でも、インクをのせて刷った後、版を持ち上げて印刷面を確認する時のワクワクする気持ちは今も同じ。同じものを何枚刷ったとしても、そこには、インクの量やのせ方、布や紙の質で毎回わずかな違いがあり、失敗作に思わぬ表現を発見したり。紙にそのまま絵筆を滑らせる油画や水彩とはちがう醍醐味がそこには感じられ、多くの作家が版画に惹かれる理由なのではないでしょうか。
そういえば、NYで人気の謎の前衛ストリート・アーティスト、バンクシー(Banksy)もステンシルを使っていますね。
何千年も前から連綿と使われている技法、ステンシル。
シンプルながら、用途や目的を選ばない柔軟性に、奥深く力強いものを感じました。
紅型の着物。 撮影は美大の友人、Naoko Dionさん。 被写体と、その周りの空気も写るような素敵な写真を撮る人です。 |